プルラリティ要約|声の大きい人が勝つ会議を変える『PLURALITY』の使い方

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会議でいつも同じ人の意見が通り、ほかの人は黙ったまま終わる
多数決で決めたはずなのに、あとで「実は反対だった」が噴き出す

声の大きい課長が話し始めると空気が決まり、あとで給湯室で「本当はこう思っていた」が聞こえてくる。わたし(多本読造)も会社勤めのころ、何度もこの場面に立ち会いました。

このモヤモヤに国の規模で答えようとしたのが、オードリー・タンさんとE・グレン・ワイルさんらの『PLURALITY[プルラリティ]』です。民主主義とテクノロジーの本ですが、会議のやり方の本としても読めます。

この記事で分かること
  1. 「プルラリティ」とは何か。違いを消さずに協働の力に変える、という本の核心を7つの論点で
  2. 内閣府・総務省・東京都の資料や米コロラド州の投票の実例と並べたとき、本の主張のどこが強く、どこに条件があるか
  3. 本を職場に持ち込むための、多本読造流「聴く会議」の1週間プラン

先に結論です。意見の違いは、無くすべき雑音ではなく、うまく扱えば成果を生む燃料です。そのためには「話す仕組み」より先に「聴く仕組み」を整え、賛成か反対かだけでなく、どれくらい強く望んでいるかまで拾うこと。そして全社で一気にではなく、小さなチームで試すことが近道です。

目次

『PLURALITY』はどんな本か

書名PLURALITY[プルラリティ] 対立を創造に変える、協働テクノロジーと民主主義の未来
著者オードリー・タン、E・グレン・ワイル、⿻コミュニティ
訳・解説山形浩生 訳/鈴木健 解説
出版社サイボウズ式ブックス(発売:ライツ社)
発行2025年5月(ISBN 978-4-909044-57-0)
構成全7章(序 → 問題提起と台湾の実例 → 思想と歴史 → 権利と土台の技術 → 協働の道具 → 職場・保健・メディアなどへの応用 → 政策と結論)+日本語版解説

タンさんは市民ハッカーの活動を経て台湾政府に入り、新設のデジタル省で初代大臣を務めた人です。ワイルさんはマイクロソフトの研究者で、本気度を数える投票方式の考案者です。

この本は作り方そのものも変わっています。原稿は世界中の協力者がオンラインで共同編集し、著作権を主張しない形で公開されました。分厚い本ですが、どの部から読んでもよい作りです。

ポイント:こんな人に向く本です
  • 会議や打ち合わせで「一部の人だけが話して決まる」ことに困っている人
  • 多数決やアンケートの結果に、どこか納得しきれないものを感じている管理職・リーダー
  • AIやITが社会をどう変えるのか、技術者任せにせず自分の頭で考えたい人

本の核心:違いを力に変える7つの論点

本は国家・歴史・技術を行き来する大きな話ですが、ここでは会社員にも使える形に7つの論点として組み直しました。各論点の「会社員の場面では」は多本読造の読み替えです。

論点ひとことで
1. 違いは燃料対立を消すのでも放っておくのでもなく、協働のエネルギーに変える
2. 人は輪の重なり一人の人間はいくつもの集団に属している。肩書きひとつで測らない
3. 聴く技術発信の道具は進んだが、大勢の声を聴き取る道具は遅れている
4. 本気度を数える多数決は向きしか数えない。強さと、声の重なり具合も見る
5. 台湾の実例市民と政府が一緒に動く仕組みで、具体的な成果が出た
6. 職場への応用会議・権限・部署横断の投資を見直す
7. 小さく試す革命ではなく、ほどよい大きさの集団で実験して広げる

論点1:違いは「消すもの」ではなく「燃料」

本はこう言う。著者たちは、これからの技術の方向として有力な二つの考え方に反対します。一つは、AIと優秀な専門家に計画を任せ、成果をみんなに配ればよいという考え方(本は「テクノクラシー」と呼びます)。もう一つは、暗号技術などを使って国や組織の決まりから抜け出し、個人が自由にやればよいという考え方(「リバタリアニズム」)です。前者は権力が一か所に集まりやすく、後者は人をばらばらにしやすい。本はそのどちらでもない三つ目の道を示し、その名前を「プルラリティ(多元性)」としました。定義は短く、次のとおりです。

「社会的差異を超えたコラボレーションのための技術」

出典:『PLURALITY[プルラリティ]』オードリー・タン、E・グレン・ワイルほか著/山形浩生訳

なぜそう言えるか。本は、多様さを爆発しうるエネルギーにたとえます。燃料は放っておけば火事になりますが、エンジンの中に閉じ込めれば車を動かす力になる。人の違いも同じで、ぶつかれば争いになるけれど、うまく仕組みに乗せれば一人では思いつかない成果を生む。だから違いを「無くす」のも「放置する」のも損だ、というのが本の立場です。

会社員の場面では。営業と開発がぶつかる会議で、部長が一方に寄せて決めればテクノクラシー型、「各自好きに」と放り出せばリバタリアニズム型。どちらも、お客さんの声と技術の制約が混ざらないまま終わります。三つ目の道は、両方がうなずける案を探す場をつくることです。

論点2:人は「いくつもの輪」が重なってできている

本はこう言う。本が理屈の土台にするのが、ドイツの社会学者ゲオルク・ジンメルの見方です。人は完全に独立した一個の粒でもなければ、社会という大きな塊に溶けた一部でもない。職場、地域、趣味の仲間、家族、応援しているチームといった、たくさんの集団の重なり目に立っていて、その重なり方がその人らしさをつくる、という考えです。

なぜそう言えるか。本によれば、近代の仕組みの多くは「個人」と「全体」の二つしか見ていません。一人一票の選挙も、一株一票の会社の議決も、人や株をばらばらの単位として数えるだけです。ところが実際の社会はつながりでできているので、この数え方では、誰と誰が同じ立場にいるのか、どの集団の声が抜け落ちているのかが見えません。

会社員の場面では。経理の佐藤さんは、子育て中の親で、前職は小売業かもしれません。肩書きだけで発言の重みを決めると、別の輪の知恵が会議に入ってきません。「子育て中の立場から」と聞くだけで、思わぬヒントが出ることがあります。

論点3:「話す技術」は進んだのに「聴く技術」は遅れたまま

本はこう言う。テレビやSNSのおかげで、一人の発言を何百万人に届けることは簡単になりました。本はこれをブロードキャスト(放送)と呼び、その逆、つまり一人が大勢の多様な意見をきちんと受け止めることを「ブロードリスニング」と名づけます。そして、この聴く側の技術はいまも手間と時間がかかりすぎる、と指摘します。本が引くハーバート・サイモンの言葉が、この問題をよく表しています。

「情報の豊富さは注意力の貧困を生み出す」

出典:『PLURALITY[プルラリティ]』オードリー・タン、E・グレン・ワイルほか著(ハーバート・サイモンの言葉として紹介)

なぜそう言えるか。人が一度に注意を向けられる量には限りがあります。意見が千件集まっても、全部を読んで整理できる人はいません。そこで本が紹介するのが、聴く作業を道具で助ける方法です。代表が「Polis(ポリス)」という仕組みで、参加者は短い意見を書き、他人の意見には賛成か反対かを押すだけ。返信や拡散はできません。集まった賛否から意見のグループを自動で見つけ、さらに「どのグループからも賛成されている意見」を目立たせます。本はこれを、分かれた人たちをつなぐ「橋渡し」と呼びます。X(旧Twitter)のコミュニティノートも似た考え方で、普段は意見が逆の人たちが、そろって「役に立つ」と評価した補足だけが表示されます。

日本の例も出てきます。2024年に行われた都知事選で、安野貴博さんは有権者の意見をネットやAIの電話で集め、AIで整理して見える形にし、政策を練り直しました。比較的無名だったのに15万票を超えた、と本は紹介しています。

会社員の場面では。発言が少ないのは、意見がないからとは限りません。話し合いの前に匿名で一言ずつ書いてもらい、賛否だけを集める。それだけで、声の大きさと意見の良さを切り離せます。

論点4:多数決は「向き」しか数えない

本はこう言う。本は多数決の弱点を三つ挙げます。(1)主な選択肢が二つに絞られやすく、みんな「どちらもいやだが、ましなほう」を選ばされること。(2)その問題にどれだけ関わっているかは人によって違うのに、一律に一票で数えること。(3)多い側の向きは分かっても、それぞれがどれほど強く望んでいるかや、どれだけ詳しいかは反映されないこと。三つ目はいわゆる「多数派の専制」につながります。

解決策の一つが、ワイルさんが考えた「クアドラティック投票」です。参加者は持ち点を受け取り、好きな案に何票でも入れられます。ただし同じ案に票を重ねるほど、必要な持ち点は二乗で増えます。1票なら1点ですが、2票で4点、3票で9点、5票なら25点。強く望む案に票を集めることはできますが、その分ほかの案にはあまり入れられません。こうして「どれだけ本気か」が結果に出るわけです。

なぜそう言えるか。本はもう一つ、数学的な理屈を持ち出します。ばらばらに考えて投じられた票は、平均すると互いに打ち消し合う。だから、互いに関係のない1万人の票は、示し合わせた100票と同じくらいの重みしか持たない、というのです。逆に言えば、同じ集団の中でそろった声は、独立した声よりも割り引いて考えるべきだ、ということになります。本はこれを応用し、普段同じ側に立つ人たちの支持は少し割り引いて、いつもの分かれ方をまたぐ新しい組み合わせを生み出そう、と提案しています。

ただし本は、投票を万能とはしていません。投票は、すでに出そろった選択肢の中から選ぶことしかできない。選択肢そのものを生む話し合いや共同作業の代わりにはならない、と念を押しています。

会社員の場面では。オフィスのエアコンの設定温度を挙手で決めると、「どちらでもいい人」と「寒くて仕事にならない人」が同じ一票になります。また、同じ部署の10人が口をそろえる意見は、10の部署から1人ずつ出た同じ意見とは重みが違う。会議の「みんなそう言っています」を聞いたら、その「みんな」がどこの誰なのかを確かめる癖をつけると、判断を誤りにくくなります。

論点5:台湾では、ふだん使いの仕組みとして回った

本はこう言う。本が何度も立ち返るのが台湾の実例です。きっかけは2014年、学生たちが立法院(国会)を3週間以上占拠した「ひまわり学生運動」でした。その後、政府は運動に関わった市民の技術者たちと組み、話し合いの場をネットに開きます。

  • vTaiwan:先ほどのPolisを使い、主にIT関連の規制を議論する場。多いときで約20万人、人口のおよそ1%が参加し、取り上げた28の問題の80%が法律や規則の手当てにつながった
  • Join:だれでも政策を提案でき、賛同が一定数を超えると政府に回答の義務が生じる仕組み。高校の始業時刻のようなIT以外のテーマも扱い、人口の約半数が使い続け、1日に約1万1000人が訪れている
  • マスクの在庫マップ:2020年1月下旬にマスクが足りなくなると、市民エンジニアの呉展璋(ハワード・ウー)さんたちが、政府の公開データを使ってどこで買えるかを示す地図を作った。2月中旬には、ほぼ誰でもマスクを手に入れられるようになった
  • 噂にはユーモアで:紙製品が品切れになるというデマには、当時の首相がおどけた写真で応じ、不安を笑いで打ち消した

なぜそう言えるか。どれも、政府が答えを決めて配るのでも、市民が勝手に動くのでもなく、両者が役割を分けて一緒に動いた例です。政府は情報を公開し、返事をする約束をする。市民はその情報で道具を作り、声を寄せる。本はこれを、論点1の「三つ目の道」が現実に回った証拠として示しています。

一方、日本語版の解説で鈴木健さんは大切な補足をしています。ネットの仕組みの裏には対面での地道な下ごしらえがあり、政府側の強い後押しも欠かせなかった。タンさんの退任後は勢いが落ちているので、特定の人に頼らない仕組みにすべきだ、という指摘です。

会社員の場面では。社内アンケートを取っても「出しっぱなし」で終わる職場は多いものです。Joinの要点は、一定の声が集まったら必ず返事をする、という約束にあります。意見箱を置くなら、「賛同が一定数を超えたら、期限を決めて誰が答えるか」というルールとセットにする。道具より約束のほうが先です。

論点6:職場は、会議と権限の持ち方から変えられる

本はこう言う。本は職場にも一章を割いています。紹介される数字は、どれも耳が痛いものです。会議は平均で労働時間の約4分の1を占め、オフィスで働く人は週に約18時間を会議に使う。給与に直すと1人あたり年に約2万5000ドルに当たり、社員の30%が不要だと感じている会議もある。会議を40%減らしたら生産性が71%上がったという結果も示されています。さらに本は、声の大きい人ばかりが話し、立場の弱い人の知恵が生かされないことを、会議が役に立たない大きな理由に挙げています。

権限の持ち方にも目を向けます。今の組織では、権限は役職とひと続きになっています。そのため、財務出身の人がトップになったとたん製品の設計にまで口を出す、といったことが起きる。権限は「あるか、ないか」の二択なので、向いていない上司でも外されるまで力を持ち続ける。部下は上司を選べない。本はこうした点を挙げ、役職による一本の序列に加えて、テーマごとに別の序列を持ち、貢献した人に発言力が集まるようにしてはどうか、と提案します。

新規事業の芽についても、Googleの「20%ルール」は一人きりの企画になりやすいと指摘し、部署をまたいで出資し合った企画に会社が資金を上乗せする方法を勧めています。

なぜそう言えるか。論点2と4を組織に当てはめたものです。人の知恵はテーマごとに価値が違い、多くの部署から少しずつ集まる支持は、一つの部署の強い推しより信頼できる、という理屈です。

会社員の場面では。役職は変えられなくても、「この議題の進行は一番詳しい人に任せる」ことならチームで決められます。システム入れ替えの議論なら、課長ではなく毎日それを使う人に舵を渡してみるのです。

論点7:革命ではなく、ほどよい大きさで「試してみる」

本はこう言う。本は、社会を一気にひっくり返すやり方を勧めません。前世紀の武力による革命は、どれも長続きする民主政治を生まなかったという研究があるからです。代わりに勧めるのが、新しい道具を小さな集団で実際に使い、そこで学んだことを隣の集団へ広げていくやり方です。

本が重視するのは、専門家が設計して配るのではなく、使う人たち自身が試しながら使い道を見つけていくやり方で、インターネットの初期もそうして広がったといいます。

試す規模の目安として、本は世界人口の平方根にあたる10万人前後(中規模の都市や大企業ほど)を挙げ、内側に多様さがあり、失敗しても深い痛手を負わないことを条件にしています。

なぜそう言えるか。大きすぎれば失敗の被害が大きく、小さすぎれば違いが少なくて道具の力が分かりません。

会社員の場面では。会社員にとっての「ほどよい大きさ」は、全社ではなく、1つのチームや1つの定例会議です。まず自分のチームで1か月試し、うまくいった点を隣のチームに話す。この順番なら、失敗しても傷は小さく済みます。

多本読造じいの一言

違いをなくせば会議は静かになる。じゃが、静かな会議は、たいてい何も生まんのじゃ。

調べてみた:本の主張を日本と海外のデータに並べる

公的資料や海外の実例を調べ、本と並べました(出典は記事末)。

調べたこと分かったこと本の主張との関係
国の政策に国民の考えは反映されているか(内閣府「社会意識に関する世論調査」2025年10月調査)「反映されていない」と答えた人が71.3%。よりよく反映させる方法として最も多かったのは「政治家が国民の声をよく聞く」で28.1%補強。日本でも求められているのは「話す」より「聴く」こと。論点3のブロードリスニングの必要性と重なる
行政でのブロードリスニング(東京都「シン東京2050」意見募集)東京都は長期戦略づくりで寄せられた意見をAIで分析・可視化する手法を採用し、2024年12月13日時点の1万1622件分の分析結果を公表補強。本で紹介された考え方が、日本の行政の政策づくりで実際に使われ始めている
偽情報に人はだまされるか(総務省「データで見るICTリテラシー2026」)過去に出回った偽・誤情報に接した人の48.4%がそれを「正しい」「おそらく正しい」と考え、20.3%が何らかの形で広めていた補強。立場の違う人がそろって認めた補足だけを出すコミュニティノートや、台湾の市民による事実確認の意義が大きい
クアドラティック投票の実例(米コロラド州)2019年春、州下院の民主党会派が予算案の優先順位づけに初めて試し、議論が行き詰まっていた案件に明確な順位がついた。その後、州の行政機関や両院の会派でも使われた。一方で2023年には、議員ごとの選択が公開されない方式が公開会議のルールに反するとして、保守系団体が訴えを起こした補強と限界。本気度を数える仕組みは実務で機能する。ただし公的な場では、匿名性と説明責任をどう両立させるかが課題になる
日本の会議のムダ(パーソル総合研究所・中原淳「長時間労働に関する実態調査」)1万人規模の企業では、ムダな会議の時間が年間約67万時間(約332人分の年間労働時間)、人件費で年間約15億円と試算補強。本が示す米国の会議の数字は日本でも他人事ではない

多本読造の見立て:賛成できる点と、条件が違う点

賛成できる点

いちばん共感したのは、「対立をなくす」ではなく「対立を使う」という発想です。日本の職場では、もめないことが良いことだとされがちです。しかし、もめない会議では、反対意見の中にあった大事な情報も一緒に消えてしまいます。違いを燃料と見るこの本の考えは、空気を読みすぎる職場にこそ効く薬だと感じました。

もう一つは、投票の限界を本自身が認めている点です。この謙虚さがあるから、道具の話が机上の空論に聞こえません。

条件が違う人には、別のやり方もある

本が描く台湾は、市民の技術者の層が厚く、受け止める大臣もいた、条件のそろった場所です。職場でも、立派なツールを入れる前に「集めた声に必ず返事をする人」を決めるほうが先だと考えます。

また、本は大規模な社会を念頭に置いているので、匿名性が前提になっている場面が多くあります。ところが5〜10人の小さなチームでは、匿名にしても書き方で誰の意見か分かってしまいがちです。小さなチームなら、匿名にこだわるより「反対意見を最初に言った人に感謝する」といった、場の約束で安心をつくるほうが合う場合もあります。規模に応じて道具と約束の配分を変える、というのが多本読造の読み方です。

ポイント:見立てのまとめ
  • 「もめない会議」より「違いが出る会議」を目指す、という発想は日本の職場にこそ効く
  • 道具より先に「声に返事をする約束」と「返事をする人」を決める
  • 小さなチームでは、匿名の道具より場の約束で安心をつくる手もある

多本読造流の実践:「声に返事が返る」チームをつくる4週間

本の道具をいきなり職場に入れる前に、整えたいのは「声が届く通り道」です。台湾のJoinが「一定の賛同には必ず回答する」という約束を芯にしていたように、道具より先に約束を置きます。手順はチームの人数で変えました。

週5〜10人のチーム30人以上の課・部本の考え
1週目:返事の約束「チャットの提案欄で2人以上が賛同した案には、リーダーが次の定例で採否と理由を答える」と決めて掲示する「課の3分の1以上が賛同した提案には、部長が2週間以内に文書で回答する」と決め、提案の窓口を1つにまとめる論点5(Join)
2週目:舵取り役定例の議題ごとに、その仕事を一番よく触っている人に進行を任せる。リーダーは最後に一言だけ話すテーマ別の「相談先リスト」をつくり、肩書きではなく実際の貢献で名前を載せる論点6(テーマごとの序列)
3週目:別の輪から聞く議題ごとに「お客さんなら」「新人なら」「家族に説明するなら」と立場を書いたカードを配り、その立場で一言ずつ話してもらう部署をまたいで同じ関心を持つ人を募り、昼休み15分の情報交換会を開く論点2・6
4週目:記録と上乗せ採った案と見送った案を一覧にし、見送りの理由と見直し時期を残す2つ以上の部署が人や時間を出し合う企画に、部の予算から少額を上乗せする枠を試しに設ける論点6・7

いちばん効くのは、見送った案への返事です。たとえば次のような文面なら、提案した人も次の声を出しやすくなります。

「〇〇さんの提案(会議資料の事前共有)に5人から賛同がありました。今回は印刷の手間が増えるため全面導入は見送りますが、毎週の定例だけ来月から試し、3か月後に見直します。」
始める前のチェックリスト
  • 返事をする人と、返事の期限を先に決めた
  • 見送る提案にも、理由と見直し時期を返すと決めた
  • 進行役を、肩書きではなく詳しさで選んだ
  • まず自分のチームで1か月試し、結果を隣のチームに話す
  • 反対意見を出してくれた人に、その場でお礼を言う

よくある疑問

『PLURALITY』は難しい本ですか?
扱う範囲は広く、数学や歴史の話も出てくるので、通読には時間がかかります。ただ、どこから読んでもよい作りなので、会社員ならまず職場の応用の章と、投票・話し合いの道具の章から読むのがおすすめです。
クアドラティック投票は職場でも使えますか?
使えます。表計算ソフトで「票数の二乗=使う持ち点」と計算するだけで再現できます。ただし、選択肢を出し尽くす話し合いが先にあってこその道具です。
無料で読めると聞きましたが?
本の冒頭でも、原書の最新版は公式サイトで無料で読めると案内されています(英語)。訳注と日本語版解説つきで読むなら書籍版が便利です。

この本が合う人・合わない人

こんな悩みがある人本から得られること
会議で一部の人だけが話して決まってしまう声の大きさではなく意見の中身を拾う「聴く仕組み」の考え方
多数決の結果に、なぜか納得感がない多数決の弱点と、本気度や声の重なりを数える方法
AIやITの未来を、技術者任せにしたくない技術の方向は社会の選択で決まる、という見取り図
すぐに使える会議のノウハウだけが欲しい△ 本は理念と事例が中心。手早いノウハウなら会議術やファシリテーションの本を先に読むほうが早い

あわせて使いたいもの

『なめらかな社会とその敵 PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論』鈴木健(ちくま学芸文庫、2022年)

『PLURALITY』の日本語版解説を書いた鈴木健さんの代表作で、本の中でも先駆けとして紹介されています。一人の票を分けて任せる「分人民主主義」など、論点2・4の考えを日本の書き手の言葉で深められます。

Amazon / 楽天ブックス
『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』オードリー・タン(プレジデント社、2020年)

タンさんが台湾のコロナ対策やデジタルと民主主義について、自分の言葉で語った本です。『PLURALITY』より読みやすく、台湾の事例の背景をつかむ入門として向いています。

Amazon / 楽天ブックス
『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』安斎勇樹・塩瀬隆之(学芸出版社、2020年)

話し合いを実り多いものにする「問いの立て方」を扱った本です。1週間プランの月曜日にどんな問いを投げるかで集まる声は大きく変わるので、聴く会議の準備に役立ちます。

Amazon / 楽天ブックス
3M ポスト・イット 強粘着ノート 75×75mm 5色セット(654-5SSAN)

3週目の立場カードや、4週目の「採った案・見送った案」の一覧づくりに使えます。粘着が強めなので、ホワイトボードで並べ替えても落ちにくいのが利点です。

Amazon / 楽天市場

まとめ

要点3行
  1. 意見の違いは消すものではなく、仕組みに乗せれば成果を生む燃料になる
  2. 話す道具より「聴く道具」を整え、賛否だけでなく本気度と声の重なりまで見る
  3. 全社でなく、1つのチーム・1つの議題で試し、集めた声には必ず返事をする

動画でもっと気軽に。じいがアニメで要点を解説しています。

参考文献・出典

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このブログでは、20〜30代の悩みに効く本を悩み別にまとめています。次に読む1冊を探してみてください。

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この記事を書いた人

20〜30代の社会人に向けて、仕事・人間関係・メンタル・時間術などの悩みに効く本を解説しています。日本未翻訳の海外の話題書もいち早く紹介。読んで終わりにせず、「今日からできること」まで具体的にお届けします。

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