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いい物を作れば、いつか報われると思っている
はじめに:利益率3.8%と50%
同じ中古車の業界に、営業利益率3.8%の会社と、約50%の会社があります。
今回紹介するのは『もうけの仕組み ビジネスモデル大図鑑 404社を徹底検証!』。会社四季報の記者たちが書き、早稲田大学の井上達彦教授が監修。上場404社を9つの”もうけの型”で比べた一冊です。
本はこう言います。もうけの差は、まず会社の「仕組み」に表れる。
先に結論(三つのうち二つ)
- もうけの差は、まず”型”に表れる。型は横3つ×縦3つの9マスで見分けられる
- 一回売って終わりより、続けてお金を受け取る矢印があるほど、もうけは厚くなりやすい
- 3つ目は後半で。ヒントは「黒い猫とゴリラ」です
第一の話:品質で勝った部品メーカーの結末
本の記者が2010年代の前後に取材した、超精密部品をつくる自動車部品メーカーの話です。不良品が多く、業績は長く低迷していました。
生産を東南アジアに移して歩留まりを改善すると、営業利益率は10%台前半に。ところが取引先から激しい値下げを求められ、利益は急減。数年後、親会社に完全に買い取られ、株式市場から姿を消しました。
本は、品質と利益は別の話で、売り切りの型では値下げを断りにくいと言います。
第二の話:もうけの型は9マス
本の地図は3×3の9マスです。横は価値の生み方(単体で売る力/仲介する力/組み合わせる力)、縦はお金の受け取り方(直接売る/時間をかけて売る/第三者を介して売る)です。
| お金の受け取り方\価値の生み方 | 単体 | 仲介 | 組み合わせ |
|---|---|---|---|
| 直接売る | 製造販売 | 流通小売 | 合算 |
| 時間をかけて売る | 継続 | フリーミアム | 設置ベース |
| 第三者を介して売る | 広告 | マッチング | 補完財プラットフォーム |
たとえば「合算」は特売品で客を呼び、総菜でもうけるスーパーの型。「設置ベース」はコピー機の本体と消耗品で稼ぐ型です。
第三の話:白洋舍の稼ぎ頭はレンタル
本の図解では、お金の流れを傘のついた矢印で描き、続く取引は二重線、もうかる矢印ほど太く描きます。
例に出てくるのがクリーニングの白洋舍(はくようしゃ)です。2020年12月期は47億円の営業赤字で、店も401店から186店に減らしました。ところが売上高を見ると、クリーニングは4割強で、6割近くはレンタルです。制服を貸す事業で、利益率は18.2%。
利益の額はクリーニングとほぼ同じでも、利益率が大きく違う。だから図では、レンタルの矢印を太く描くのです。
第四の話:フランチャイズの粗利率
日本マクドナルドの国内2982店のうち、自社で運営するのは約3割の878店。残りの2104店はフランチャイズで、本部はロイヤルティなどを受け取ります。本によると、粗利率は直営が11.0%、フランチャイズの事業が38.6%です。
コンビニも同じ構図です。セブン-イレブン・ジャパンは全国2万1000店のうち自社の店は193店で、本部の利益率は28%。ただし本は、消えたコンビニの看板の例も挙げています。
第五の話:替え刃と建機
20世紀の初め、アメリカのキング・ジレット氏は使い捨てのかみそりを製品にしました。本体と刃のつなぎ目で特許を取り、本体は安く、純正の替え刃で長く稼ぐ。本はこれを設置ベースモデルの代表として紹介しています。
建設機械のコマツは、建機に通信の仕組みを積んで故障の信号を遠くから見守り、売ったあとも客とつながり続けます。もっとも本は、ジレットもその後シェアを削られたと書いています。
調べてみた:サブスク市場と上場約3700社
民間の矢野経済研究所の推計では、消費者向けのサブスク市場は2023年で約9430億円、前の年より5.2%増える見込みでした。
本の集計でも、新興企業の代表100社のうち54社が継続モデルです。
| 東証の上場会社の数 | 時点 |
|---|---|
| 約3500社(本の記載) | 本の刊行時点 |
| 約3700社(東証の一覧を数えた値。主な三つの市場の国内の会社) | 2026年9月末 |
404社は、その1割ちょっとを同じ物差しで並べた図鑑です。
第六の話:第三者が払う型(中古車とフリマ)
冒頭の約50%の会社は、中古車オークションの会場を開くユー・エス・エスです。取引のたびに手数料を受け取り、売り手と買い手をつなぐマッチングの型で、営業利益率は50.1%と本は書いています。
本は、ここに別の業界のメルカリを並べます。同じつなぐ型で、事業の利益率は40%。任天堂はゲーム機に外の会社のソフトも載せる型で、本の推計ではソフトは売上高の5割強、粗利では約8割です。
第七の話:強い型の寿命と、意外な年収
強い型にも寿命があります。新聞の発行部数は2004年の5302万部から2023年の2859万部へ46%減り、広告の収入も7550億円から2420億円へ減りました。
本が意外な結果として挙げる比べ方もあります。第三者を介す型を持つ70社とそれ以外の334社では、営業利益率は11.8%対7.8%で70社が上。ところが平均年収は754万円対831万円で、もうかる型の会社のほうが低めでした。本も、ここには検討の余地がありそうだ、としています。
最後の話:黒い猫とゴリラ(結論③)
宅急便が当たると、ほかの会社も宅配へ乗り出し、犬やゴリラなど動物のマークをまねました。いわゆる動物戦争です。しかし本は、大事だったのは黒い猫ではなく、配送のルートや料金をそろえた仕組みのほうだと言います。
うまいまねの例はトヨタです。1950年代の前半、大野耐一氏はアメリカのスーパーにヒントを得ました。後ろの工程が前の工程から必要な分だけ引き取る形です。本は、同じ業界をまねると値段の競争になりやすい、と言います。
じいの見立て
賛成できるのは、違う業界を同じ物差しで並べる見方です。本には、機関投資家30人のほとんどが、中期の計画より型のほうが大切だと語った、ともあります。
一方で、じいは売り切りの腕を捨てる話とは読みません。本にも、キーエンスが製造販売のまま営業利益率50%を超える例や、トヨタの原価低減が出てきます。腕は型の土台です。また、図では客の顔までは描けないと本自身も断っています。答えの本というより、問いを立てる道具箱です。
じい流の実践①:矢印ノート
- 紙に仕入れ先・自分の会社・お客の箱を描き、矢印でつなぐ
- お金の矢印に「1年に何回お金が来るか」を書く。1回なら売り切りの型
- お客から自分へ、困りごと(相談・苦情)の矢印を逆向きに描き、二重線を引けないか考える
描くのは15分で十分。続く矢印の種は、困りごとの中にあります。
じい流の実践②:週1社の型あて
ニュースで見かけた会社を週に1社、9マスのどこか当ててみます。答え合わせには巻末の404社の一覧が使えます。本も、これは正誤表ではなく、考えるための参考だと言います。
慣れたら、自分の会社でマスを一つだけずらしてみましょう。本にはヤクルトの例があり、宅配でヤクルト1000を育て、ヤクルト本社の単体の営業利益率は2019年度の約2%から2022年度は約13%に上がりました。ただし必ずうまくいくとは限らないので、小さく試すのがコツです。
読み方の注意
- 出てくる会社は、もうけの仕組みを説明するための例です。特定の銘柄や金融商品を勧めるものではありません
- 数字は本の刊行時点(主に2023〜2024年度の決算)のものです
- 分類にただ一つの正解はありません(本自身もそう書いています)
- 投資などお金の判断はご自身で。必要なら専門家にご相談ください
この本が合う人
- 会社のもうけが薄いと感じる人 → 第2章(27社の図解)
- 決算のニュースが分からない人 → 第1章
- 新しい企画を任された人 → 第3章と監修者の解説
- 業界の外を知りたい人 → 第4章のランキング
巻末の404社一覧は、ニュースのたびに引ける辞書になります。
まとめ
- もうけの差は、まず型に表れる(9マスで見分ける)
- 続く矢印が、もうけを厚くする
- まねるなら、見た目ではなく矢印をまねる
あなたの仕事にも、まだ描かれていない二重線が一本あるかもしれません。
- 書名:もうけの仕組み/副題:ビジネスモデル大図鑑 404社を徹底検証!
- 監修:井上達彦/編:会社四季報業界地図編集部/東洋経済新報社/2025年7月1日発行
- ISBN:978-4-492-53484-7
出典
- 『もうけの仕組み ビジネスモデル大図鑑 404社を徹底検証!』井上達彦 監修/会社四季報業界地図編集部 編/東洋経済新報社(2025年7月1日)
- 株式会社矢野経済研究所「サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2023年)」2023年12月18日
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3416 - 日本取引所グループ「東証上場銘柄一覧(2026年9月末)」プライム・スタンダード・グロースの内国株式を数えた値
https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/01.html
※企業の例は仕組みの説明のためのもので、特定の銘柄の推奨ではありません。
