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個別株にも興味はあるけれど、プロの土俵で素人が勝てる気がしない
給料日に積立の約定メールが届くたび、少し安心して、少し物足りなくなる。証券アプリのランキングを開いては閉じる。わたし(多本読造)にも、こうした相談がよく届きます。
そんな人に読んでほしいのが、清原達郎さんの『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)です。日本の割安な小型株を中心に25年間ヘッジファンドを運用し、2005年には長者番付で1位になった人が、引退にあたって「成功より失敗」を中心に書き残した本です。この記事では、本の考え方を論点ごとに組み直し、会社員の暮らしに置き換えて解説します。
- 『わが投資術』の核になる3つの考え方(少数意見・数字で決める割安・生き残り)
- 本が個人に勧める「指数+小型株」の分け方と、その前提条件
- 会社員が、お金をかけずに「株を見る目」を練習する4週間の手順
先に結論です。この本が教えるのは「当てる技術」ではなく、みんなと違う見方を数字で裏づけ、外れても退場しない形で張るという考え方です。個別株を選ぶつもりがない人には、TOPIXに連動するETFの積立がいちばん合理的だ、と本自身が書いています。積立派にとっても、「なぜ自分は積立なのか」に答えが出る一冊です。
『わが投資術』の基本情報と、向いている人
| 書名 | わが投資術 市場は誰に微笑むか |
|---|---|
| 著者 | 清原達郎(元タワー投資顧問 運用部長) |
| 出版社・発行 | 講談社、2024年3月 |
| ISBN | 978-4-06-535035-5 |
| 中身の柱 | 割安な小型株の見つけ方/25年間の売買の記録(大きな失敗を含む)/空売り/詐欺と手数料/これからの日本株 |
著者は野村證券から外資系証券会社などを経て、1998年にタワー投資顧問で「K1ファンド」を始めました。長者番付1位でも肩書は運用部長、つまり会社員でした。咽頭がんで声を失ったあと、後継者がいないファンドを閉じることになり、そのノウハウを本にまとめた、という成り立ちです。
数字は2024年2月時点のもので、銘柄は著者が当時売買した記録です。この記事でも、特定の銘柄や商品はすすめません。
- 新NISAの積立はしているが、株価がどう決まるのかを自分の言葉で説明できない人
- 決算書の数字を「投資の判断」にどう使うのかを知りたい人
- プロの成功談より、失敗の中身から学びたい人
本の核心:6つの論点で読み解く
本は売買の記録を追いながら進みますが、ここでは考え方の筋を6つの論点に並べ替え、「本の主張 → なぜそう言えるか → 会社員の場面では」の順で見ていきます。
論点1:お金になるのは「みんなと違う、まだ値段に入っていない見方」
本の主張。株価には、大勢の投資家の予想がすでに混ざり込んでいます。だから「みんなと同じ考え」は投資のアイデアになりません。値打ちがあるのは、まだ株価に反映されていない見方です。
市場は、あなたの意見が少数意見である限りあなたの味方です。
出典:清原達郎『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)
なぜそう言えるか。全員が強気の銘柄は、良いニュースがすでに値段に入っています。予想どおりになっても上がる余地は小さく、外れたときは一斉に売られます。逆に、少数派の見方は、外れても誰も困らない(値段に入っていないので下げにくい)うえ、当たったときだけ大きく報われます。大事なのは、「強気か弱気か」ではなく「どれだけ違うか」だという点です。本は、市場が年10%の増益を見込んでいる会社を自分は年30%と見ているなら、同じ強気でも立派な少数意見だ、という例を出しています。
会社員の場面では。会議で全員がうなずく企画は、たいてい他社もやっています。評価されるのは、皆が見落とした前提を一つ示せたときです。ただし根拠のない逆張りは、ただの反対意見です。そこで次の「数字で裏づける」が出てきます。
論点2:「割安」は気分ではなく、数字で決める
本の主張。著者は、「割安」を口にするなら中身を数字で示せ、と繰り返します。よく使われるPBR(株価純資産倍率)は役に立たないとまで書き、代わりに自分で決めた物差しを使います。
| 物差し | 本の定義(考え方) | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| ネットキャッシュ | 流動資産+投資有価証券×70%−負債 | 会社が赤字でも、すぐお金に換えられる財産から借金を全部引いた残り |
| ネットキャッシュ比率 | ネットキャッシュ÷時価総額 | 1なら「会社をまるごとタダで買える」水準 |
| キャッシュニュートラルPER | PER×(1−ネットキャッシュ比率) | お金をため込んだ会社と借金の多い会社を、同じ土俵で比べ直したPER |
なぜそう言えるか。PBRの分母になる純資産には、工場や土地のように、売ろうとしても帳簿どおりの値段がつかない資産が入っています。本の例では、100億円の工場しか持たず、年の利益が2000万円の会社が時価総額20億円なら、PBRは0.2倍で一見とても安い。けれどPERは100倍で、利益を全部配当しても利回りは1%しかありません。安く見えて株価がいつまでも上がらない「バリュートラップ」の典型です。
一方、手元のお金が多い会社は、いずれ増配や自社株買いでそれを株主に返す余地があります。PER15倍で、手元のお金が時価総額の3割ある会社なら、15×0.7で実質10.5倍。ほぼ暗算でできるのがこの物差しのよいところだと、著者は書いています。本によれば、ファンドを閉じる1年ほど前の集計で、時価総額が20億円以上ある会社のうち、この比率が1以上となる会社は320社あり、大型株はゼロ、中型株11社、小型株309社でした。安い会社は、目立たない小さな会社に集中しているわけです。
会社員の場面では。家計の余裕を、家の評価額ではなく「預金からローン残高を引いた額」で測るのに近い発想です。見た目の資産(PBR)より、すぐ使えるお金(ネットキャッシュ)を見るのがこの本の流儀です。
この簡単な式は預金金利がほぼゼロという前提で成り立つ、と本自身が断っています。また本の定義は、学術研究で言う「バリュー(PBRの低さ)」とは違います。
論点3:株価には「悲観の量」が値札として付いている
本の主張。大型株の値段にどんな予想が入っているのかは、プロでもほとんど読めません。ところが、誰にも相手にされない割安な小型株では、それが計算で見えてきます。本の計算では、PER5倍で、手元のお金が時価総額の3割ある株には「毎年27%ずつ利益が減っていく」という悲観が入っています。
なぜそう言えるか。金利と成長率からPERの理屈上の値を出すと、PERが低いほど「この会社はこの先、利益が減る」と市場が見ている計算になります。本の例では、ネットキャッシュがゼロでPER5倍なら毎年18.4%の減益、6.5倍なら13.7%の減益が値段に入っています。つまり、利益がただ横ばいなだけでも、悲観が少し和らぐだけで株価が3割上がっても不思議はありません。だから著者は、3割上がったくらいで売るな、業績しだいだが最低2倍を狙え、と言います。株価が倍以上になる余地のある投資法なのに、小さな利益で手放すと、大きな当たりが出ないからです。
会社員の場面では。「もう伸びない」と思われている部署は、少し成果が出ただけで評価が跳ね上がります。期待の低さそのものがクッションになるのです。
- PER(利益に対して何年分の値段か)
- ネットキャッシュ比率(すぐ使えるお金が時価総額の何割か)
- その2つから、市場がどれだけの減益を見込んでいるか
論点4:「成長を確認してから」では遅い。確率で考える
本の主張。割安な小型株の中に、ときどき本物の成長企業が紛れています。それを見つけたら、成長を見届けてからではなく、成長を予想した段階で買う。著者はこの道のりを、はしごを一段ずつ上る姿にたとえています。
なぜそう言えるか。本の説明では、注目されていない会社が増益を続けると、まず小型株に強い投資家が気づき、次に中小の証券会社がレポートを書き、最後は大手や外資系の証券会社まで追いかけるようになります。見る人が増えるたびにPERが切り上がります。本の想定の表では、5年で利益が4.2倍、PERが5倍から20倍に上がり、時価総額は30億円から500億円へ約16.7倍になります。1年目に買えば約17倍、2年様子を見てから買うと約5倍です。
「でも2年連続で増益なら、成長株だと分かるのでは」と思いますよね。本は確率でこれを否定します。成長株が混ざった1000社のモデルで計算すると、2年続けて増益した会社が本当に成長株である確率は17.4%、3年続けても29.6%にとどまります。確かめているうちに株価は上がり、それでも確信は持てない。だから、割安さを安全網にして早めに張り、「違った」と分かればやめればよい、というのが著者の答えです。PERが低くお金を多く持つ株なら、成長しなくてもそれほど損をしにくい、という計算がその裏にあります。
会社員の場面では。新しく来た後輩が2回続けて良い資料を出しただけで「この人はできる」と決めるのは早すぎます。でも、3年の実績がそろうまで仕事を任せないと、その人は他の部署に引き抜かれてしまうかもしれません。少しの証拠で小さく任せ、様子を見て広げる。本の考え方は、そういう人の見方にも通じます。
論点5:小さな会社の伸びしろは、経営者で決まる
本の主張。小型株の長期の成長を見るとき、著者がいちばん重く見るのは「経営者に会社を大きくする強い意志があるか」です。本は、成長の9割は経営者だ、という言い方をしています。
なぜそう言えるか。大企業は人材も資金も厚いので、トップが交代しても業績はそれほど揺れません。小さな会社は、社長の決断ひとつで方向が変わります。著者は社長との面談で何度も読み違えたと率直に書いており、お金をたっぷり持っていても、事業を語らない社長の会社は安いまま終わった例も挙げています。数字で候補を絞り、最後は経営者で確かめる順番です。
会社員の場面では。転職先を選ぶとき、給与や業績の数字と同じくらい「上司が何を目指しているか」が働きやすさを左右します。個人投資家は社長に会えませんが、会社のホームページ、決算説明会の資料や動画、中期経営計画なら誰でも読めます。言っていることと、やっていること(数字)がそろっているかを見るだけでも、ずいぶん判断材料になります。
論点6:勝つより先に、生き残る
本の主張。この本でいちばん重いのは、失敗の記録です。ITバブルでの空売りの大損、空売りを大きくしすぎた時期、そしてリーマンショック。2005年10月の高値から2009年2月の底まで、ファンドの基準価額は72%、運用資産は89%減りました。
なぜそう言えるか。それでもファンドが倒れなかった理由を、著者は4つ挙げています。わたしなりにまとめると、「お金を出してくれる人が残ってくれた」「持っていた会社にお金があり、自社株買いに応じてもらえた」「自分に借金がなかった」「空売りをやめて形を単純にした」の4つです。逆に言えば、借金や信用取引で目いっぱい張っていたら、底値の手前で強制的に退場させられていたということです。ファンドの基準価額は、その底から2018年2月までに12倍になりました。生き残った人だけが、回復の果実を受け取れます。
個人への助言もここにつながります。信用取引はしない。余裕資金が400万円なら、まず200万円で(本業の収入があれば300万円まで)。暴落時に買える分を残す。本業があるほうが、暴落の怖さに負けずに買える、とも書いています。
会社員の場面では。毎月の給料は投資では大きな強みです。生活費を株に頼らないので、相場が荒れても待てます。生活防衛費まで投資に回すと、その強みを自ら手放すことになります。
大儲けした人の本なのに、いちばん熱が入っとるのは「沈まずに済んだ理由」なんじゃ。勝ち方は人それぞれじゃが、負けても退場しない形は誰でも真似できる。
番外:コストと「うまい話」が、静かにリターンを削る
本の後半は手数料と詐欺への警告です。著者の見立てでは、株の期待リターンはおそらく年3%前後。そこで手数料を年1%取られたら、リターンの3分の1が消えます。アクティブ運用がその手数料に見合うには、TOPIXに毎年5%は勝たないと、とまで書いています。販売手数料3%の投資信託は論外、という立場です。
情報代も節約せよ、と言います。新聞・雑誌をいくつも取ると年12万円を超えるが、有料で選ぶなら「会社四季報」オンラインのベーシック(月1100円)で足り、会社のホームページは無料の宝庫だ、という意見です。
そして、未公開株は決して買わない。「たまたま枠が余ったので特別に」という話は詐欺だと思ってよく、いちばん危ないのは信頼している友人が持ってくる話だ、と著者は警告しています。
大型株についての結論は明快です。プロでも指数に勝ち続けるのは難しく、勝つファンドを前もって選ぶのはさらに難しい。だから大型株に広く分けて持ちたいなら、TOPIXに連動するETFを選ぶのが理にかなっており、暴落の時期は誰にも読めないので、暴落中も買い続ける積立型がよい、という結論です。
「株式投資の才能」なんてありません。
出典:清原達郎『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)
著者によれば、差がつくのは自分の失敗をどれだけ糧にしたかの一点です。最初の銘柄は真剣に選び、10銘柄ほどに分けて当たりも外れも経験せよ、と勧めます。1〜2銘柄だけ当たると、才能があると勘違いしやすいからです。
調べてみた:本の主張を、公的なデータと並べる
本は2024年2月に書かれています。その後の数字や、関連する研究・制度と並べてみました。
| 調べたこと | 分かったこと | 本との関係 |
|---|---|---|
| NISAの利用状況(金融庁、2025年12月末) | NISA口座は2821万。うち30代が495万、40代が538万。一方、2025年に一度も買付がなかった口座が約1045万(約37%)ある | 本は新NISAで個人投資家が大きく増えると予想していた。口座は増えたが、使われていない口座も多い |
| 家計の有価証券(総務省「家計調査(貯蓄・負債編)」2026年1〜3月期、二人以上の勤労者世帯) | 世帯主30代は貯蓄1279万円のうち有価証券463万円、40代は1438万円のうち391万円 | 本の「余裕資金400万円なら200万円で」は、平均的な30〜40代の規模にほぼ重なる(平均は一部の世帯に引っぱられる点に注意) |
| NISAの枠(金融庁「NISAを知る」) | 年間の上限はつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円。生涯の非課税枠は1800万円(成長投資枠は1200万円まで)。保有期間は無期限 | 本が繰り返す「年間の枠に気をつけて」の中身。個別株は成長投資枠で買う |
| グレアムの「ネットネット株」(『新 賢明なる投資家』など) | バリュー投資の祖ベンジャミン・グレアムは、流動資産から負債をすべて引いた額より安い株に注目した | 本のネットキャッシュはこの系譜に近い。違いは投資有価証券を7割で数えること、PERと組み合わせること |
| Fama・French(1992年)の研究 | 米国株のリターンの差は、会社の規模と簿価時価比率(PBRの逆数)で多くが説明できると示した | 小型株・割安株に注目する考えには学術的な背景がある。ただし効果が弱まった時期もあり、必勝法ではない |
| 東京証券取引所の要請(2023年3月31日) | プライム市場・スタンダード市場の上場会社に、資本コストや株価を意識した経営への対応を「お願い」した(義務ではない) | 本も東証の動きに触れつつ、PBRだけで割安を判断しない立場をとる |
| 未公開株の勧誘(金融庁・日本証券業協会) | 証券会社による未公開株の勧誘は、協会規則で認められた一部の制度を除いて禁止。「必ず上場する」「あなただけ特別に」は詐欺の典型の文句とされる | 本の「未公開株は決して買わない」と一致する |
本の助言の多くは、公的な注意喚起や古典的な理論と同じ方向を向いています。ただ、小型株・割安株の効果はいつも出るわけではありません。本が「10銘柄ほど」「3〜5年」「資金の一部で」と条件を重ねるのは、その不確かさが前提だからだと読めます。
本の数字は2024年当時のもの。NISA口座の約37%が2025年に一度も使われていないという数字を見ると、多くの人にとっては「個別株の前に、まず積立を止めずに続けること」が最初の一歩だと分かります。
多本読造の見立て:うなずいたところと、別のやり方もあるところ
うなずいたところ
一つ目は、「割安」を数字で決めている点です。投資の本には「安いときに買え」と書いてあることが多いのですが、何をもって安いとするかは書いていないことがよくあります。この本は、計算式まで出して自分の物差しを公開しています。物差しがあると、外れたときに「どこを読み違えたか」を振り返れます。失敗から学べ、という本のメッセージと、物差しを持つことは一つにつながっています。
二つ目は、運用資産が89%減った体験から「借金をしない・全部をつぎ込まない」を導いていることです。机上の理屈ではない重みがあります。
三つ目は、個別株の名人が大型株なら指数の積立で十分だと認めていることです。積立派には心強い後押しです。
条件が違う人には、別のやり方もある
本の手順は、20銘柄ほどを見張り、決算短信を読み、経営者の発言を確かめる、という手間を前提にしています。著者はそれを仕事として25年続けた人です。残業が多い時期や、子育て・介護で手が回らない時期の会社員には、同じ量の調べものは負担が大きいでしょう。そういう時期は、本自身が合理的だと言う「指数の積立だけ」で十分です。無理に個別株を続けて生活が崩れては、本の言う「生き残り」に反します。
もう一つ、本の物差しは「預金金利がほぼゼロ」という当時の前提に立ち、金利が変わればPERの適正水準も変わると本自身が示しています。式を今の銘柄にそのまま当てはめるより、「なぜこの式か」を学ぶ本として読むと長く役立ちます。
積立派は指数と手数料の話を。個別株に挑戦したい人は、割安の定義と個人向けの提案を失敗談とセットで。
多本読造流の実践:お金を入れる前の「4週間の練習帳」
本の助言は「最初の銘柄選びを真剣に考えよ」「失敗から学べ」です。とはいえ、いきなりお金を入れるのは怖い。そこでわたしは、お金を入れずに「見る目」を練習する4週間をおすすめします。必要なのはノート1冊と電卓(スマホの電卓でも可)、会社のホームページだけです。
| 週 | やること | かける時間 | ねらい |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 家計の「余裕資金」を出す。生活防衛費(生活費の半年〜1年分など、各家庭で決める)を除いた額を書き出し、その半分を「個別株の上限」とノートに書く | 週末30分 | 本の「全部つぎ込まない」を、自分の数字にする |
| 2週目 | 名前を知っている会社を1社選び、決算短信の貸借対照表からネットキャッシュを出し、時価総額で割って比率を電卓で計算する | 通勤中の15分×3日 | 物差しを「使える道具」にする |
| 3週目 | PERが低い会社を5社書き出し、各社に「なぜ安いのか」の仮説を1行ずつ書く(跡継ぎ・業界のイメージ・利益の減少など) | 昼休み10分×5日 | 安い理由がもっともか、誤解かを見分ける練習 |
| 4週目 | 5社の中から「買うならこれ」を1社決め、理由・想定する保有期間・「こうなったら考え直す」条件をノートに書く。まだ買わない | 週末30分 | 真剣に考えた予想を記録し、あとで答え合わせできるようにする |
3か月後にノートを開いて答え合わせをします。当たり外れより「仮説のどこがずれたか」を書き足すのがコツです。お金を減らさずに「失敗から学ぶ」を一度経験してから、個別株を始めるか決めても遅くありません。
- 生活防衛費を別の口座に分けている
- 積立(指数)を止めずに続ける前提で、個別株はその外で考えている
- 信用取引は使わない、と決めている
- 個別株の上限額を、ノートに数字で書いた
- 買う理由と「考え直す条件」を、買う前に書いた
- 3割上がっても理由を確かめずに売らない、と決めている(ただし見立て違いに気づいたら別)
- 勤め先や取引先の未公開の情報は使わない(インサイダー取引にあたるおそれがある)
よくある疑問
- 本で紹介された銘柄を買えば儲かりますか?
- そうは言えません。本の銘柄は2024年以前の売買の記録で、今の株価や業績は当時と違います。本から学ぶべきなのは、銘柄名ではなく「なぜその時に安かったのか」という見方です。
- 新NISAの積立だけでは足りないのですか?
- 本は、個別株を選ぶつもりがない人にはTOPIXのETFの積立がいちばん合理的だと書いています。足りないということはありません。個別株は、時間と興味がある人が、資金の一部で試す位置づけです。
- 本の物差しは自分でも計算できますか?
- 会社のホームページにある決算短信の貸借対照表から、流動資産・投資有価証券・負債の合計を拾い、時価総額で割れば計算できます。本は、まずPERやPBRの低い会社から候補を選び、決算短信で確かめる方法も紹介しています。
- 空売りはしたほうがいいですか?
- 本は、個人には個別株の空売りをすすめていません。損失に上限がなく、プロが使える海外の貸株の情報も手に入りにくいからです。
この本が合う人・合わない人
| こんな悩み | この本で得られること |
|---|---|
| 積立だけでいいのか不安 | ◎ プロの立場から「大型株なら指数の積立が合理的」という根拠が分かる |
| 個別株の「割安」がよく分からない | ◎ ネットキャッシュ比率など、数字で割安を決める物差しが手に入る |
| 暴落が来たら怖くて売ってしまいそう | ○ 資産が9割近く減った体験と、生き残れた理由から、備え方を学べる |
| 今すぐ買える銘柄リストがほしい | △ 本は銘柄の推奨リストではない。考え方を学ぶ本として読むのが合う |
| 海外株や成長株の投資法を知りたい | △ 本は日本の割安な小型株が中心 |
あわせて使いたいもの
本の著者が「有料の情報源を一つだけ選ぶなら」と名前を挙げたデータ本です。上場企業の業績や財務の数字が一冊にまとまっているので、実践の3週目「PERの低い会社を書き出す」作業に使えます。
Amazon / 楽天ブックス貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書のつながりを、図で一体として説明する入門書です。ネットキャッシュを自分で計算する前に、「流動資産」「負債」がどこに載っているのかを押さえるのに向いています。
Amazon / 楽天ブックスバリュー投資の古典に、現代の注解を加えた版です。『わが投資術』のネットキャッシュの考え方が、どんな系譜の上にあるのかを確かめられます。
Amazon / 楽天ブックスインデックス投資を中心に、個人の運用の基本方針の立て方を説いた定番の本です。『わが投資術』の「大型株ならTOPIXのETF」「手数料に気をつけよ」を、別の著者の視点から深められます。積立派の人にはこちらから読むのもおすすめです。
Amazon / 楽天ブックス紹介した本はいずれも学ぶための本で、特定の銘柄や金融商品の売買をすすめるものではありません。投資の判断はご自身の状況に合わせて行ってください。
まとめ
- お金になるのは「みんなと違い、まだ株価に入っていない見方」。ただし根拠は数字で示す
- 割安はPBRではなく、ネットキャッシュ比率とPERで決める。安い理由がもっともな「罠」もある
- 勝つより先に生き残る。借金をせず、全部つぎ込まず、大型株は指数の積立に任せる
動画でもっと気軽に。じいがアニメで要点を解説しています。
参考文献・出典
- 清原達郎『わが投資術 市場は誰に微笑むか』講談社、2024年3月(ISBN 978-4-06-535035-5)
- 金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果(令和7年12月末時点)」2026年7月3日 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20260703.html
- 金融庁「NISAを知る」NISA特設ウェブサイト https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/index.html
- 総務省統計局「家計調査(貯蓄・負債編)」世帯主の年齢階級別、2026年1〜3月期(e-Stat)https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0002210017
- 日本取引所グループ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」2023年3月31日 https://www.jpx.co.jp/news/1020/20230331-01.html
- Fama, E. F. & French, K. R. (1992) “The Cross-Section of Expected Stock Returns”, Journal of Finance 47(2), 427-465 https://doi.org/10.1111/j.1540-6261.1992.tb04398.x
- 金融庁「未公開株購入の勧誘にご注意!~一般投資家への注意喚起~」https://www.fsa.go.jp/ordinary/mikoukai/
- 日本証券業協会「未公開株詐欺」(証券用語解説)https://www.jsda.or.jp/shijyo/seido/jishukisei/words/0272.html
- 日本証券業協会「『株や社債をかたった投資詐欺』の手口」https://www.jsda.or.jp/about/hatten/inv_alerts/toushisagi/teguchi.html
- ベンジャミン・グレアム著、ジェイソン・ツバイク注解『新 賢明なる投資家(下)』パンローリング(紀伊國屋書店 商品ページ)https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784775970508
- 國貞克則『新版 財務3表一体理解法』朝日新書、2021年(版元ドットコム)https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784022951120
- チャールズ・エリス『敗者のゲーム[原著第8版]』日本経済新聞出版、2022年(国立国会図書館サーチ)https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I031878769
- 『会社四季報』2026年4集 秋号、東洋経済新報社(Fujisan.co.jp)https://www.fujisan.co.jp/cat100/cat3061/
