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「やらなきゃいけないのは分かっているのに、どうしても手が動かない」
「休日も仕事のことが頭から離れず、ずっと疲れている」
「頑張れない自分は、意志が弱いんだと思ってしまう」
こんにちは、多本読造です。
20代・30代は、仕事でも私生活でも「頑張ること」を求められる時期です。でも、気合いと根性で乗り切ろうとするほど、心も体もすり減っていきます。
今回解説するのは、アリ・アブダール著『feel good 快適な努力で最高の成果を上げる方法』(原題:Feel-Good Productivity)です。
著者のアリ・アブダールは、イギリスの元医師です。YouTubeで生産性や勉強法を発信し、「世界で最もフォローされている生産性の専門家」と呼ばれています。この本は英国でベストセラーになり、日本語版も出版されています。
この本のメッセージは、とてもシンプルです。
頑張れないのは、意志が弱いからではない。気分が良くないからだ。
こんな人におすすめ
- やるべきことを先延ばしにしてしまい、自己嫌悪に陥りがち
- 頑張っているのに成果が出ず、燃え尽きそうになっている
- 「努力=つらいもの」という考え方を手放したい
この記事でわかること
- なぜ「気分の良さ」が成果につながるのか
- やる気を生み出す3つのエネルギー源
- 先延ばしの原因になる3つのブロックと、その外し方
- 燃え尽きを防ぐ3つの方法
- 20〜30代の働く人が、今日から試せること
動画でも解説しています
この本の内容は、アニメ動画でも要約しています。まず全体像をつかみたい方は、こちらからどうぞ。
1. この本の結論:気分が良いから、成功する
「頑張るほどうまくいかない」研修医時代
アリ・アブダールがこの本の考え方にたどり着いたのは、研修医1年目のクリスマスでした。
休暇の申請を忘れていた彼は、クリスマス当日に、一人で病棟全体を任されることになります。次々と起こる急変、鳴り止まない呼び出し、終わらない書類。それまで彼を支えてきた「もっと頑張る」という方法は、まったく通用しませんでした。
睡眠は削られ、友人とも疎遠になり、仕事は楽しくない。それでも彼は、さらに頑張ろうとしていました。
そんなとき思い出したのが、恩師の言葉です。「治療が効かないなら、診断を疑え」。彼は、それまで信じてきた「成功には苦しみが必要だ」という考え方そのものを疑い始めます。
気分の良さが、脳の働きを変える
著者が手がかりにしたのは、心理学の研究でした。
ある有名な実験では、ちょっとしたお菓子をもらって気分が良くなった人のほうが、ひらめきが必要な問題を解くのが得意だったことがわかっています。
ポジティブ心理学の研究者バーバラ・フレドリクソンは、これを「拡張-形成理論」として説明しました。気分が良いとき、私たちの視野は広がり(拡張)、創造性や回復力といった心の資源が少しずつ蓄えられていく(形成)というものです。
本書は、気分が良いことの効果を3つにまとめています。
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| エネルギーが湧く | 気分が良いときに出る「幸せホルモン」が、意欲や集中力を高める |
| ストレスが減る | ポジティブな感情は、ストレスで高まった心拍や血圧を早く元に戻す |
| 人生全体が豊かになる | 前向きな感情を多く感じる人ほど、仕事でも人間関係でも成果を出しやすい |
3つ目については、225本の研究、のべ27万人以上のデータをまとめた分析があります。そこから見えてきたのは、私たちが思い込んでいる順番が逆だということでした。
成功したから気分が良くなるのではない。気分が良いから、成功するのだ。
2. 本書の全体像:3つのステップ
本書は、次の3部構成になっています。
| パート | テーマ | 3つの要素 |
|---|---|---|
| 第1部 エネルギーを生む | やる気の源をつくる | 遊び・力・人 |
| 第2部 ブロックを外す | 先延ばしをなくす | 不確実さ・恐れ・惰性 |
| 第3部 長く続ける | 燃え尽きを防ぐ | 減らす・回復する・一致させる |
各章には、すぐに試せる「実験」が6つずつ用意されています。著者は、全部をやる必要はないと言います。自分に合うものを試し、合わなければやめる。読者一人ひとりが「生産性の科学者」になることが、この本のゴールです。
3. 第1部:やる気を生む3つのエネルギー
① 遊び:仕事を「ゲーム」に変える
本書の最初の章は、ノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマンの話から始まります。若くして大学教授になった彼は、物理に飽きてしまいました。ところが、「役に立つかどうか」を気にせず、遊ぶように物理に向き合い始めたことで、のちのノーベル賞につながる発見をします。
著者は、仕事に「遊び」を取り入れる方法として、次の3つを挙げています。
- 冒険にする:毎日を、寄り道やサイドクエストのあるゲームのように捉える
- 楽しさを見つける:「この仕事が楽しかったら、どうなる?」と自分に問いかける
- 深刻になりすぎない:失敗は、自分が失敗だと思ったときにだけ失敗になる
② 力:自分でコントロールできる感覚を持つ
ここでの「力」は、他人を支配する力ではありません。自分の仕事や人生を、自分の手で動かしているという感覚のことです。
- 自信のスイッチを入れる:自信は生まれつき決まっているものではない。自信のある人を「演じる」ことから始めればいい
- スキルを上げる:初心者の気持ちで学び直し、まだ専門家でなくても人に教えてみる
- 主導権を持つ:何をするかは選べなくても、どうやるかは選べる
③ 人:一緒にいると元気になる人を増やす
- 仲間として接する:同僚をライバルではなく、同じチームの仲間として見る
- 助ける・助けを求める:私たちは、人を助けることも、人に助けを求めることも少なすぎる
- 多めに伝える:「伝えすぎかな」と思うくらいで、ちょうどいい
4. 第2部:先延ばしをなくす3つの方法
本書は、先延ばしの原因を「気分」に見ています。気分を悪くしている原因(ブロック)を取り除けば、行動は自然と始まるという考え方です。
① 不確実さ → 「なぜ・何を・いつ」をはっきりさせる
何をすればいいかがあいまいだと、人は動けません。
- なぜ:その仕事をする理由を言葉にする
- 何を:目標の立て方を変える。本書は、よく知られた「SMARTな目標」の代わりに、「NICEな目標」を提案しています
- いつ:「歯を磨いたら、ストレッチをする」のように、毎日の習慣と結びつけて実行のタイミングを決める
| NICEな目標 | 意味 |
|---|---|
| Near-term(近い) | 遠い未来ではなく、近い期間で考える |
| Input-based(行動ベース) | 結果ではなく、自分の行動を目標にする |
| Controllable(コントロールできる) | 自分の力で達成できることにする |
| Energising(元気が出る) | 考えるとワクワクするものにする |
② 恐れ → 恐れをなくすのではなく、向き合う勇気を持つ
失敗が怖くて動けないとき、本書は次の3ステップをすすめています。
- 理解する:自分は何を恐れているのか、その恐れはどこから来ているのかを考える
- 小さくする:「これは10分後に重要か? 10週間後は? 10年後は?」と自分に問いかける
- 乗り越える:ほとんどの人は、自分が思うほど他人のことを見ていない
③ 惰性 → とにかく、小さく始める
何もしていないときは、何もしない状態が続きやすい。逆に、一度動き出せば続けやすくなります。
- 始めるのを邪魔している「摩擦」を見つけて減らす
- 次の一歩を具体的に決め、進み具合を目に見える形で記録する
- 小さな達成を祝い、自分に優しくする
5. 第3部:燃え尽きを防ぐ3つの方法
本書によると、燃え尽きの最大の原因は、疲労ではなく「気分の落ち込み」です。著者は、燃え尽きを3つのタイプに分けて、それぞれの対処法を示しています。
| 燃え尽きのタイプ | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| やりすぎ型 | 仕事を抱えすぎている | 減らす |
| 消耗型 | うまく休めていない | 回復する |
| ずれ型 | 目標が本当の自分と合っていない | 一致させる |
① 減らす
- 抱えるプロジェクトを絞り、「ノー」と言えるようになる
- SNSのアプリをスマホから消し、ブラウザからだけ見られるようにする
- 休憩を「特別なもの」ではなく「必要なもの」として、仕事の中に組み込む
② 回復する
本書は、良い休み方を「CALM」という言葉で表しています。自分が「有能だ」と感じられて、「自分で選んでいる」と思えて、「解放されて」いて、「穏やか」でいられる活動を探そう、というものです。
また、自然の中で過ごすことも勧めています。短い散歩でも、部屋に観葉植物を置くだけでも効果があるといいます。
③ 一致させる
自分にとって本当に大切なものを知るために、本書は3つの時間軸で考えることを勧めています。
- 長期:人生の最期に、どんな人生だったと言いたいかを想像する
- 中期:1年後に、どんなことを祝っていたいかを考える
- 短期:その1年後に近づくために、今日できる3つの行動を決める
6. 20〜30代の働く人が、この本から学べること
「頑張れない自分」を責めなくていい
この本の一番の価値は、「頑張れないのは自分が弱いからだ」という思い込みから解放してくれることだと私は感じました。
動けないときは、気合いが足りないのではなく、気分を悪くしている原因がどこかにある。そう考えるだけで、自分を責める代わりに、原因を探して手を打てるようになります。
仕事の「やり方」は自分で選べる
若手のうちは、仕事の内容を自分で選べないことがほとんどです。それでも、第2章の「どうやるかは選べる」という考え方なら、明日からでも使えます。同じ資料作りでも、締め切りをゲームにしてみる、新しいツールを試してみる。小さな工夫で、仕事の手ざわりは変わります。
燃え尽きる前に「減らす」
真面目な人ほど、仕事を抱え込みがちです。本書の「やりすぎ型の燃え尽き」は、まさに20〜30代に多いパターンです。全部を引き受ける前に、「1つだけに集中するとしたら、どれを選ぶか」を考えてみてください。
今日からできる1つのこと
今日の仕事の中から、気が重いタスクを1つだけ選んでください。そして、こう自分に問いかけてみてください。
「この仕事が楽しかったら、どうなるだろう?」
音楽をかけながらやる、タイマーで時間を計ってゲームにする、終わったら好きなコーヒーを飲む。どんな小さな工夫でもかまいません。気分が少し良くなれば、手は自然と動き始めます。
まとめ
『feel good』は、「努力はつらいもの」という常識をひっくり返し、気分の良さから成果を生み出す方法を教えてくれる一冊です。
- 成功したから気分が良くなるのではなく、気分が良いから成功する
- 「遊び・力・人」の3つで、やる気のエネルギーを生み出す
- 先延ばしは「不確実さ・恐れ・惰性」を取り除けば、自然と解消する
- 燃え尽きは「減らす・回復する・一致させる」で防げる
頑張りすぎて疲れている人ほど、読んでほしい本です。日本語版も出ているので、気になった方はぜひ手に取ってみてください。
英語の原書で読みたい方はこちら。著者のYouTubeと同じく、平易で読みやすい英語で書かれています。
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