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30代・40代の会社員は、AI を「使うかどうか」を自分で選べなくなってきた世代です。総務省の令和8年版 情報通信白書(報道による)では、生成AIを使ったことがある人は30代で56.3%、40代で49.0%、生成AIを使っている企業は86.4%でした。わたし(多本読造)も、会議のメモを AI にまとめさせるようになってから、出てきた文章をそのまま信じていいのか、毎回少し迷います。
その「裏側」を何年にもわたって取材したのが、カレン・ハオさんの『Empire of AI(エンパイア オブ AI)新しい帝国が生まれるとき』(長谷川圭さん訳、東洋経済新報社)です。この記事では、本を章の順ではなく「会社員が AI を使うときに知っておきたいこと」の順に組み直して解説し、調べ足した統計と、明日から使える確認の手順まで紹介します。
- 『Empire of AI』の核心(なぜ AI を作る会社を「帝国」と呼ぶのか)を、6つの論点で解説
- 本の数字を、公的資料や最新の調査と並べて確かめた結果(補強と限界)
- 多本読造流「AIレシート」:使う前・使った後の3つの確認と1週間の手順
先に結論です。この本のメッセージは「今の AI の形は自然にそうなったのではなく、少数の人が選んだやり方であり、その代金の一部は見えない場所の人や土地が払っている。だから使う側も『便利かどうか』だけでなく『誰に力が集まるか』を見て使おう」です。AI を使うのをやめろという本ではなく、使い方を選ぶための地図になる本です。
『Empire of AI』の基本情報と、向いている人
| 書名 | Empire of AI(エンパイア オブ AI)新しい帝国が生まれるとき |
|---|---|
| 著者・訳者 | カレン・ハオ(著)、長谷川圭(訳) |
| 出版社・発行 | 東洋経済新報社、2026年7月(原著 Empire of AI: Dreams and Nightmares in Sam Altman’s OpenAI は Penguin Press、2025年刊) |
| ページ数・価格 | 600ページ(A5判)、4,950円(税込)※版元・書店の情報による |
| ISBN | 978-4-492-44494-8 |
| 取材の規模 | 約260人に300回を超える取材(OpenAI の現・元社員や幹部90人超を含む)。OpenAI とアルトマン氏は取材への協力を断った、と本は書いています |
カレン・ハオさんは、MIT Technology Review や The Wall Street Journal などで AI を追ってきた記者で、2019年に OpenAI を初めて本格的に取材した人でもあります。本は OpenAI の創業からサム・アルトマン氏の解任と復帰(2023年11月)、その後までを追いながら、ケニアのデータ作業者、チリやウルグアイの水をめぐる住民運動まで、5つの大陸の現場を行き来します。
※この記事は、原書の英語ペーパーバック版(2025年11月付のあとがき入り)を読んで書いています。邦訳とは言い回しや版が違う場合があります。本文の引用は原書からの筆者訳です。また、本が扱う人物・企業の話には、匿名の証言や係争中の申し立てが含まれます。記事では「本はこう書いている」と分けて紹介します。
- 仕事で ChatGPT などを使い始めたが、作る側の会社のことは何も知らない人
- 「兆ドル」「ギガワット」といった AI ニュースの数字が、自分とどう関係するのか分からない人
- 社内で AI 導入の旗振り役や、ルールづくりを任されそうな中堅の人
本の核心:AI が「帝国」と呼ばれる6つの理由
本の言いたいことを束ねると、次の6つの論点になります。「本の主張 → なぜそう言えるか → 会社員の場面に置き換えると」の順で見ていきます。
論点1 「大きいほど賢い」は自然法則ではなく、選ばれた道
本の主張:今の生成AIは「データと計算機をとにかく増やせば性能が上がる」という考え方で作られています。著者は、これは物理法則のようなものではなく、資金と信念を持つ一部の人がそう決めて実行し続けたから当たってきた「自分で実現させた予言」だと見ます。
なぜそう言えるか:本によると、最先端の研究に使われる計算量は2012年以降、およそ3.4か月で倍になるペースで増え、OpenAI の GPT-2 から GPT-3 への移行では計算量が500倍になりました。一方で、同じ会社の2021年の内部文書は、この伸びをそのまま繰り返すのは難しく、今後は手法の工夫が要ると認めていたといいます。さらに本の終盤では、次の大型モデルが規模を増やすだけでは期待ほど伸びず、新しい研究の発想が要る局面に来ていると描かれます。つまり「大きくする」は唯一の答えではなく、いくつもある道の1つだった、というのが著者の見立てです。
会社員に置き換えると:「他社もみんな導入しているので」という理由だけで、いちばん高機能で高価な AI プランを全社に入れる提案は、よくある光景です。本の視点を借りると、まず「この仕事にその大きさが本当に要るのか」を問うことになります。定型のメール返信なら、テンプレートと検索で足りることも多いはずです。
論点2 帝国の「方程式」は、あいまいな使命から始まる
本の主張:著者は、AI 業界の大手を歴史上の帝国にたとえます。他人の持ち物(データ、作品、土地、電気、水)と労働を取り込み、「人類のため」「近代化」という物語と、ライバルに負けられないという競争の論理でそれを正当化する。そして、その仕組みを動かす材料は3つあると整理します。壮大な使命で人材を集めること、資金と資源を集めて邪魔な規制や反対を取り除くこと、そして使命の中身をあいまいにしておくことです。
なぜそう言えるか:決め手は3つ目です。使命があいまいなら、状況に合わせて読み替えられます。本は、OpenAI の「使命」が指す中身が、ほぼ数年おきに変わってきたことを、会社の発表や幹部のメールから追っています。
| 年 | 「使命」が指していたこと(本の整理をもとに筆者が要約) |
|---|---|
| 2015年 | お金もうけに縛られない非営利で、研究を公開する |
| 2018〜19年 | 巨額の資金を集めるため、利益に上限のある営利の仕組みを作る |
| 2020年 | モデル本体は出さず、API(使う窓口)を通じて提供する |
| 2022年 | 少しずつ世に出して学ぶとして、ChatGPT を急いで公開する |
| 2024年 | 高性能な AI を無料か安い値段で人々の手に届ける |
会社員に置き換えると:社内の「DX推進」「生産性向上」というスローガンを思い浮かべてください。言葉が大きいほど、予算も人も集まりやすい。でも中身が決まっていないと、いつの間にか「とにかくツールを入れること」が目的になり、現場の負担は誰も測らなくなります。使命の言葉そのものより、その言葉で何が集められ、何が止められているかを見る。これが本の一番使える視点です。
論点3 AI の「安全」は、見えない場所の人の手で作られている
本の主張:チャットボットが乱暴な文章を出さないのは、魔法ではありません。どんな文章が有害かを、人が1件ずつ読んで仕分けたデータを使って学ばせているからです。本は、その汚れ仕事が、経済危機にある国の高学歴で困窮した人々に、安い報酬で回されてきたと書きます。
なぜそう言えるか:本によると、OpenAI はケニアの委託先 Sama と4つの契約(総額23万ドル)を結び、作業者は平均時給1.46〜3.74ドルで、暴力や性的虐待を描く大量の文章を読んで分類しました。ある作業者は性的な内容のチームで月1万5,000件を確認する役目を負い、心をすり減らして家族を失います。その兄は作家として独立していましたが、ChatGPT の公開後、執筆の依頼が1つずつ消えていきました。同じ技術が兄弟の両方を傷つけた、という場面は本の中でも特に重く響きます。別の委託プラットフォームが2024年3月にケニアからの利用をまとめて止めたことも描かれます(委託先の企業は、本の中で一部の指摘を否定しています)。
会社員に置き換えると:コールセンターや経理の外注で、「委託費が安くなった」とだけ報告され、その先で誰がどんな条件で働いているかは誰も知らない――という構図に似ています。AI の利用料が安いことと、その仕組みを支える人の手が安く扱われていることは、つながっているかもしれない。そう知っておくだけで、ニュースの見え方が変わります。
論点4 「クラウド」は雲ではなく、電気と水と土地
本の主張:AI は画面の中の存在に見えますが、実体は巨大な計算機の建物(データセンター)です。本は、生成AIの拡大が電気・水・土地を大量に必要とし、そのしわ寄せが干ばつに苦しむ地域にも及んでいると書きます。
なぜそう言えるか:本によれば、これまで最大級だったデータセンターは150メガワット規模(米国の約12万2,000世帯の年間消費に相当)でしたが、AI 向けに1,000〜2,000メガワット級の「メガキャンパス」が計画されるようになりました。Hugging Face の研究者たちの測定では、文章を1,000回生成すると、スマホをほぼ4回満充電できるくらいの電気を使い、画像なら1枚でスマホの約25%分にあたるといいます。チリの首都近郊では、Google が計画したデータセンターが冷却に毎秒169リットルの飲み水を使う見込みだと住民団体が申請書から見つけ、反対運動が広がりました。あとがきでは、4年で5,000億ドルを投じる計画や、2033年までに250ギガワットという構想まで紹介されます。
会社員に置き換えると:家電の電気代と同じで、1回分は小さくても、回数と台数が増えると請求額は跳ね上がります。「とりあえず AI に10パターン作らせて、良いのを選ぶ」という使い方は、手軽な分だけ回数が膨らみやすいやり方です。
- 文章1,000回の生成 ≒ スマホほぼ4回分の満充電(測定研究の平均)
- 画像1枚 ≒ スマホ約25%分の充電
- 従来の最大級データセンター150MW ≒ 米国約12万2,000世帯分
論点5 秘密が増えるほど、「すごい」は自己申告になる
本の主張:競争が激しくなるにつれて、AI 企業は学習データやモデルの中身を公開しなくなりました。著者は、外から確かめられないまま「性能が上がった」「安全だ」と言われる状態こそが、科学と安全の両方を弱めていると指摘します。
なぜそう言えるか:本が紹介するスタンフォード大学の透明性の評価(2023年)では、調べた10社すべてが F 評価で、最高でも54%でした。ChatGPT 公開の頃の社内文書では、社内テストの「答えが決まっている質問」の約30%で、もっともらしい作り話(ハルシネーション)が出ていたとされます。さらに2024年には、新モデルの発売日を優先したため、危険な能力を調べるチームに残された評価期間が10日しかなかった、という社内メモの内容も紹介されます(本の取材に基づく記述です)。
会社員に置き換えると:営業資料の「当社比○倍」を、そのまま上司に報告する人はいないはずです。AI の出力も同じで、もっともらしい文章ほど、元の資料に戻って確かめる手間が欠かせません。
論点6 別の道はある。問いを「良いか悪いか」から「誰に力が集まるか」へ
本の主張:ここまでの批判は、AI という技術を丸ごと捨てようという話ではありません。著者が問題にしているのは、個人の情報や働く人・作り手の価値を巨大な1社に預けることが恩恵の前提になっている、今の進め方のほうです。
なぜそう言えるか:その反例として本が挙げるのが、ニュージーランドの先住民マオリのメディア団体 Te Hiku Media です。マオリ語の音声認識を作るため、地域の人に目的を説明して同意を得たうえで録音を呼びかけると、約2,500人が10日間で約20万本を吹き込み、文字起こし付きの音声が310時間集まりました。OpenAI の音声認識 Whisper が学習に使った68万時間とは比べものにならない少なさですが、GPU わずか2基で、正確さ86%のモデルができたといいます。データは共同体が管理し、価値観を尊重する相手にだけ使わせる。小さく、目的をしぼり、同意を土台にした AI です。そのうえで著者は、ある研究者の問いを借ります。
AI は権力を一か所に固めるのか、それとも分け直すのか。
――リア・カルーリ氏の問い(カレン・ハオ『Empire of AI』エピローグより、原書から筆者訳)
著者は、力が集まる軸を「知識(研究と情報)」「資源(お金・データ・労働・電気・土地)」「影響力(考え方や話題づくり)」の3つに分け、それぞれを分け直す方法として、独立した研究や情報開示、働く人の保護、そして一般の人への教育を挙げます。
会社員に置き換えると:部署で AI を入れるときに「便利か」だけで決めると、ノウハウもデータも外の1社に集まっていきます。「自分たちの知識が手元に残る使い方か」を基準に加えるだけで、選ぶツールも、社内に残す記録のやり方も変わってきます。
調べてみた:本の主張と、最新のデータを並べると
本の主張を、公的資料や調査と突き合わせました(出典は記事末)。
| テーマ | 調べて分かったこと | 本の主張との関係 |
|---|---|---|
| AI で仕事は楽になったか | Upwork Research Institute の2024年の調査(2,500人)で、経営層の96%が生産性向上を期待する一方、AI を使う従業員の77%は「仕事が増えた」と回答。増えた理由で多かったのは「AI が作った内容の確認・手直し」(39%) | 本も序盤でこの調査を引いている。補強。ただし民間企業の調査で、生産性を実測したものではない |
| 日本での広がり | 総務省の令和8年版 情報通信白書(報道による)で、生成AIの利用経験は30代56.3%、40代49.0%。企業の利用は86.4% | 本は米国中心だが、使う側が選べなくなっている状況は日本も同じ。補強 |
| 電気の量 | IEA(国際エネルギー機関)は、世界のデータセンターの電力消費が2024年の約415TWhから2030年に約945TWhへと倍増すると見込む。今の日本全体の消費に近い規模。日本でも、データセンターや半導体工場を理由に、2034年度の最大需要が2024年度より4.4%増えるという想定が出ている(2025年初めの想定、報道による) | 本の「電気」の論点を、日本の暮らしにまで引き寄せる数字。補強 |
| 1回あたりの電気と水 | Google は2025年8月、Gemini の文章の質問1回(中央値)の電力を0.24Wh、水を0.26mLと公表した。ただし企業の自己申告で、発電所で使う水などが抜けているとの批判もある | 1回は小さくても回数が桁違い、という見方と両立する。条件付き |
| 水の数字の訂正 | チリの水の比較は、初版で単位を取り違えた大きすぎる表現があり、指摘を受けて著者自身が2025年11月に訂正した。手元の原書ペーパーバック版は訂正後の「町の住民の年間使用量を上回る」という表現 | 本の数字にも議論がある、という限界。ただし干ばつ地域にデータセンターが集まる問題そのものは残る |
| データ作業の今 | オランダの非営利団体 WageIndicator の2026年6月の調査(回答57人)では、ケニアで Meta 向けのデータ作業をする人の平均月収は約200ドルで、生活できる賃金に届いた女性は0人 | 本とは別の会社・別の時期だが、構図が続いている例。補強 |
日本の側の手がかりも2つ見つかりました。総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、AI を作る人・提供する人だけでなく「使う人」にも、取り組むべきことを示しています。法律ではありませんが、社内ルールの土台になります。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)は、AI の学習の段階と生成物を使う段階を分けて整理しており、本が問題にする「作品の無断利用」を日本ではどう考えるかの入口になります。
- 強み:仕事が増えた・電気が増えるという大きな流れは、本の外の調査でも同じ向きに出ている
- 注意点:1つ1つの数字には幅や訂正がある。数字の大きさより「誰が負担しているか」という構図で読むのがおすすめ
多本読造の見立て:賛成できる点と、見方が違う点
賛成できる点は、「便利さには請求書がある」ことを、具体的な人と場所で見せてくれたことです。ケニアの作業者、チリの住民、マオリの人々の話は、ニュースの「兆ドル」という数字よりずっと記憶に残ります。もう一つは、「AI は良いか悪いか」という答えの出ない議論から、「誰に力が集まるか」という確かめられる問いに切り替えてくれたことです。これは会社の会議でもそのまま使えます。
見方が違う点もあります。本は作る側の内幕に多くのページを割いていて、その多くは匿名の証言や、係争中の話に支えられています。著者自身も区別して書いていますが、読む側も「これは本の取材による見方だ」と意識して読むと、受け取り方のバランスが取れます。また、大きなモデルのおかげで、少人数の会社や個人が以前なら外注するしかなかった翻訳や要約を自分でこなせるようになった、という恩恵の側は、本ではあまり語られません。日々の仕事で AI に助けられている人には、「便利さを手放す」のではなく「便利さの仕組みを知ったうえで使い方を選ぶ」という読み方が合っていると思います。
- 匿名証言・係争中の話は「本の見方」として読む
- 大きなモデルは使い分ける。手放すのでなく、選ぶ
多本読造流の実践:「AIレシート」で使い方を選ぶ
本を読んで、わたしは「AI を使うたびに、目に見えないレシートが出ている」と考えるようにしました。レシートの「品目」には、自分の入力、誰かの作品、電気と水、人の手が並んでいるのに、「あなたの支払い」欄はいつも0円に見える。そこで、使う前と使った後に、そのレシートを自分で書いてみるのが「AIレシート」です。本の処方箋は国や企業向けの大きな話が中心なので、それを会社員1人の机の上に縮めてみました。
①【入れる前】入れる情報は誰のものか?(社外秘・お客さまの個人情報・他人の文章や画像は入れない)
②【使った後】確認と手直しに何分かかったか?(自分で書くより本当に速かったか)
③【次から】この仕事に、いちばん大きな AI が要るか?(テンプレート・検索・小さなツールで足りないか)
1週間の手順表
| 曜日 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 月 | 手帳かノートの1ページを「AIレシート」にする。日付・仕事の名前・使った AI を書く欄を作る | 5分 |
| 火 | AI を使うたびに、①の確認をしてから入力する。迷った情報は入れずに「伏せ字」にして試す | 1回10秒 |
| 水 | 出力の確認・手直しにかかった時間を、②としてメモする | 1回10秒 |
| 木 | 同じ種類の仕事を1つだけ、AI を使わずにやってみて時間を比べる | 15分 |
| 金 | 1週間のレシートを見直し、③で「AI でなくてよかった仕事」に印をつける | 10分 |
| 土日 | AI のニュースを1本選び、「この数字の代金を払うのは誰か」を一言書く | 5分 |
大事なのは木曜の「使わずにやってみる」です。わたしの場合、定型の議事録は AI のほうがずっと速く、取引先へのお詫びのメールは自分で書いたほうが確認込みでも早く終わりました。この線引きができると、AI は「使いどころを選ぶ道具」になります。
- 入れてはいけない情報の例が、具体的に書いてあるか
- 出力を確認する担当と、確認にかける時間が決まっているか
- 「AI を使った」ことを、資料のどこかに残す決まりがあるか
- 使っている AI サービスの利用規約(入力データの扱い)を誰かが読んだか
- 大きな有料プランが要る仕事と、要らない仕事を分けて考えたか
よくある疑問
- 『Empire of AI』は AI を使うなという本ですか?
- いいえ。著者は AI そのものは否定しておらず、問題にしているのは「一か所に力を集めるやり方」です。小さく同意を土台にした AI の例も紹介しています。
- OpenAI やアルトマン氏の悪口の本ですか?
- 批判的な視点で書かれていますが、匿名の証言、係争中の申し立て、企業側の反論を区別して書く姿勢がとられています。読む側も「本の見方」として受け取るのがよいと思います。
- 仕事で AI を使い続けても大丈夫ですか?
- 本は使う人を責めてはいません。入れる情報に気をつけ、出力を確かめ、仕事ごとに使い分ける。そうした「使い方を選ぶ」ことが、この本から持ち帰れる一番の実践です。
- 本の数字は信頼できますか?
- 多くは報道・論文・社内文書などの出典つきですが、水の比較のように著者自身が訂正したものもあります。大きな流れは他の調査とも合っています。数字の細部より構図で読むのがおすすめです。
この本が合う人・合わない人
| こんな悩みの人には | この本でこう解決する |
|---|---|
| AI の便利さの裏が見えずモヤモヤする | データ・人の手・電気と水という「裏側」を、具体的な人と場所で知れる |
| AI ニュースの巨大な数字についていけない | 数字を「誰に力とお金が集まるか」という1本の軸で読めるようになる |
| 社内の AI ルールづくりを任された | 「入力」「確認」「使い分け」の論点を、背景から説明できるようになる |
合わないかもしれない人:プロンプトの書き方や業務効率化の手順をすぐに知りたい人には、この本は遠回りです。使い方の入門書と組み合わせ、この本は「なぜ確認が要るのか」を知るために読むのがおすすめです。
あわせて使いたいもの
本の理解を深めたり、「AIレシート」を続けたりするのに役立つものを選びました。
『Empire of AI』が議論の下敷きにしている本の一つです。技術の恩恵が誰に届くかは技術そのものでなく社会の選び方で決まる、という視点を、千年の歴史から確かめられます。
上巻をAmazonで見る/上巻を楽天ブックスで見る/下巻をAmazonで見る/下巻を楽天ブックスで見る『Empire of AI』のチリの章で名前が挙がる本です。チリが「資源を差し出す国」になっていった経緯を知ると、データセンターと水をめぐる話の背景が、より立体的に見えてきます。
Amazonで見る/楽天ブックスで見る入力してはいけない情報や著作権など、実践の①で確認したいことを体系的に学べます。社内ルールづくりを任された人の基礎固めに。
Amazonで見る/楽天ブックスで見る手のひらサイズで表紙が硬く、立ったままでも書けるノートです。「AIレシート」の記録を、パソコンを開かずにその場で残すのに向いています。
Amazonで探す/楽天市場で探すまとめ
- 今の AI の「大きいほど良い」は自然法則ではなく、少数の人が選んで進めてきた道だ
- その代金の一部は、データ作業者や、電気と水を差し出す地域など、見えない場所が払っている
- 使う側は「便利か」に加えて「誰に力が集まるか」で使い方を選べる。まずは AIレシートの3つの確認から
本の最後には、仕組みを知ることそのものが力になる、という考え方が置かれています。著者が引く、半世紀以上前の言葉で締めくくります。
プログラムの仮面がはがされ、その仕組みが分かる平易な言葉で説明されれば、魔法は崩れ去る。
――ジョセフ・ワイゼンバウム氏の言葉(カレン・ハオ『Empire of AI』エピローグでの引用、原書から筆者訳)
動画でもっと気軽に、本のポイントを多本読造じいと一緒にたどれます。通勤のお供にどうぞ。
参考文献・出典
- カレン・ハオ『Empire of AI(エンパイア オブ AI)新しい帝国が生まれるとき』長谷川圭 訳、東洋経済新報社、2026年(原著 Karen Hao, Empire of AI: Dreams and Nightmares in Sam Altman’s OpenAI, Penguin Press, 2025/Penguin Books ペーパーバック版 2026) https://str.toyokeizai.net/books/9784492444948/
- 総務省『令和8年版 情報通信白書』(2026年7月) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/pdf/01point.pdf/報道:宣伝会議 AdverTimes(2026年7月29日) https://www.advertimes.com/20260729/article552212/
- Upwork「Upwork Study Finds Employee Workloads Rising Despite Increased C-Suite Investment in Artificial Intelligence」(2024年7月) https://www.upwork.com/press/releases/upwork-study-finds-employee-workloads-rising-despite-increased-c-suite-investment-in-artificial-intelligence
- IEA「AI is set to drive surging electricity demand from data centres…」(2025年4月10日) https://www.iea.org/news/ai-is-set-to-drive-surging-electricity-demand-from-data-centres-while-offering-the-potential-to-transform-how-the-energy-sector-works
- ニュースイッチ(日刊工業新聞)「電力需要は34年度4.4%プラスに、DC・半導体工場の新増設影響」(2025年) https://newswitch.jp/p/44498
- Google Cloud Blog「Measuring the environmental impact of AI inference」(2025年8月) https://cloud.google.com/blog/products/infrastructure/measuring-the-environmental-impact-of-ai-inference
- Xataka(2025年12月18日)チリの水の数字の訂正をめぐる記事 https://www.xataka.com/robotica-e-ia/centros-datos-consumen-muchisima-agua-seguramente-que-creiamos-culpa-libro
- WageIndicator Foundation「Meta data workers in Kenya survey」(2026年6月) https://wageindicator.org/ai/what-we-do/news-stories/meta-data-workers-kenya-survey/
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/20240419_report.html
- 文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(文化審議会著作権分科会法制度小委員会、2024年3月) https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html
